我々が現在検討している再生計画案の基本方針は以下のとおりです。この基本方針は、現時点(2018年6月29日)の案にすぎません。この基本方針について、債権者の皆様のご意見を伺った上で改訂し、できる限り債権者の意向を反映した再生計画案を作成したいと考えております。
皆様のご意見については、メールアドレス(mtgoxforcreditors アットマーク gmail.com)(アットマークは、@へ変換してください)へのメールの送信、手紙のいずれの方法によっても受け付けております。皆様のご意見をお待ちしております。なお、債権者の方であることを確認するために、氏名や届出番号を記載して頂けると幸いです。本投稿には一番下にコメント欄も設けております。
【再生計画案の基本方針】
- 再生計画案はシンプルかつ履行確実性が高いものにする。
- 株主に対する分配は行わない。
- BTC返還請求権に係る債権に対してはBTCとその派生物(BCHを含むがこれに限らない)を分配することにより弁済する。
- 金銭債権者に対する一定の保護措置をとる。
- 債権者に対する第1回弁済は、再生計画認可決定確定後(開始決定のスケジュールどおり進めば2019年5~6月頃)、速やかに行う。
- 残余財産が生じた場合又は新たに財産が発見された場合に追加弁済を行う。
- スポンサーの選定は、債権者にとってメリットがあることが明らかな場合を除き、原則として行わない。
【基本方針の考え方】
1.再生計画案はシンプルかつ履行確実性が高いものにする。
我々は、裁判所に対し、再生手続における標準スケジュールどおり手続を進行するよう求めておりました。しかし、再生手続開始決定では、再生計画案の提出期限が2019年2月14日と定められ、標準スケジュールよりも数ヶ月後ろ倒しになっています。
再生手続のスケジュールをこれ以上遅らせることなく第1回弁済を出来る限り早く実施するためには、再生計画案はシンプルなものにすべきであると考えています。再生計画案が複雑なものになると、関係者の利害調整が必要となり、再生計画案の可決が遅くなることが懸念されます。また、複雑な再生計画案は理解するのが難しく、多くの債権者にとってfriendlyではありません。我々としては、再生計画案を可能な限りシンプルなものとして、再生計画案を早期に可決し、債権者に対して可能な限り最速で弁済することが重要であると考えます。
そして、債権者に対する弁済を確実にするために、再生計画案は、日本における再生手続のプラクティスを踏まえた、履行確実性が高い現実的な内容であるべきと考えます。
2.株主に対する分配は行わない。
Mt.Goxは、債権者が預託していたBTCを全て返還できない状態にあります。したがって、Mt.Goxの全財産は、債権者に対して分配されるべきものであり、株主に対して分配されるべきでないと考えています。
3.BTCに対してはBTCとその派生物(BCH)により弁済する。
Mt.GoxにBTCを預託していた債権者(BTC債権者)に対しては、現金ではなく、BTCとその派生物(BCH等)で弁済することが適切と考えます。
なぜなら、BTC債権者に対しては、BTC等により弁済することが、最も簡単で効率的であり、銀行手数料などの取引コストについて最小化できるからです(これが正にBTCの良いところです。)。また、現金で弁済するとなると、大量のBTC等を換金する必要が生じますが、売却はBTC等の価格の下落につながりまし、BTC等の価格の変動は激しいため、売却するタイミングが難しいという問題があります。
もっとも、この点については、管財人が、セキュリティ上の問題から、現金による弁済の方が適切であるとか、送付時にハッキングされないようにするためには現金による弁済をすべきであると考える可能性があります。
我々としては、BTC等による弁済が望ましいと考えていますが、現金であっても経済的には同価値といえますので(BTC等の価格変動が大きいことが問題を生じさせますが)、現金による弁済が絶対的に受け入れられないものではないとは考えています。
4.金銭債権者に対する保護
破産手続であったならば金銭債権者が受けることができた配当額については、これを金銭債権者に弁済することを認めます。具体的には、金銭債権者には100%弁済することを認めることになります(但し、破産手続において認められた範囲に限ります)。これにより、BTC債権者にとってはMt.Goxの配当可能な資産からの分配額が減少することになりますが、調査委員が作成した調査報告書に、民事再生手続きを開始する前提条件として、破産手続における金銭債権者が得られた利益を保護することが求められていることから、このような規定を設けるものです。
5.債権者に対する第1回弁済は、再生計画認可決定確定後(再生手続開始決定記載のスケジュールどおり進めば2019年5~6月頃)、速やかに行う。
債権者は、Mt.Goxの破たんから、もう4年もの間、弁済を待っています。債権者に対する弁済はなるべく早急になされるべきであることは言うまでもありません。
第1回弁済時に、現在Mt.Goxが保有している約16万6000BTCのビットコイン及び16万8000BCHのビットコイン・キャッシュ(もしあるのであればその他の派生物)をはじめとする資産の大部分を債権者に弁済すべきであると考えています。
6.残余財産が生じる場合に追加配当を行う。
第1回弁済時には、債権の存否が争われている債権があることから、その債権の金額について決着がつくまで、一定の財産をMt.Goxに保留せざるを得ないことも想定されます。そのような場合には、その財産は追加弁済として債権者に弁済すべきと考えます。
逆にいうと、全ての資産・債務が確定するまで弁済を留保するのではなく、まず、Mt.Goxの手元にある財産の大部分を債権者になるべく早く第1回弁済として弁済し、未確定のものは追加弁済とすることで、早期の弁済を実現すべきであると考えます。
また、追加弁済についても、未確定の資産・負債が全て確定してから追加弁済を行うのではなく、未確定の資産・負債を第三者に譲渡して金額を確定するといったような、追加弁済を早期に実行するためのスキームも検討すべきであると考えます。
7.スポンサーの選定は、債権者にとってメリットがあることが明らかな場合を除き、原則として行わない。
Mt.Goxにスポンサーを募らなければならないという意見があるようです。しかし、Mt.Goxの事業は既に停止しており、信用を補完し事業を継続するためにスポンサーが必要であるといった状況ではありません。日本の再生手続においては、確かにスポンサーを選任することが一般的であるにせよ、これは必須ではなく、我々としては、スポンサーがいなくとも債権者の皆様による可決と裁判所による認可決定により再生計画は成立するものと考えております。また、スポンサーの募集をする場合には、それなりの時間がかかりますし、スポンサー候補者が複数出た場合に委任状勧誘合戦が生じるようなこともあり得ます。そうなると、債権者に対する早期弁済という、我々が最も重視している目的への障害となる可能性もあります。スポンサーの募集を必ずしも否定するものではありませんが、スポンサーの募集は、債権者にとってメリットがあり、早期弁済に支障にならないことが明らかな場合を除き、行うべきでないと考えます。