Mt.Goxに対する民事再生手続開始の申立てのお知らせ

2017年11月30日

 

1.民事再生手続開始の申立て

当職らは、2017年11月24日、現在破産手続中の株式会社MTGOX(「Mt.Gox」)について、一部の債権者を代理して、東京地方裁判所(「東京地裁」)に対し民事再生手続開始の申立てを行いました。これに対し、東京地裁は、民事再生手続を開始すべきかどうか判断するため、同日に調査命令を発令して、調査委員を選任しました。

今後、調査委員が、民事再生手続を行うべきかどうかを調査し、その調査結果を踏まえて、東京地裁が民事再生手続を開始するか否かを判断することになります。

2.申立ての理由

破産手続中であるMt.Goxに対し、当職らは、当職らが代理した債権者に代わって、民事再生手続の開始を申立てた理由についてご説明します。

今年1年でビットコインの取引価格は大幅に上昇し、多くの債権者の方は、「Mt.Goxは破たんしたけれども価格上昇の恩恵を受けることができる。」と期待されたことかと思います。しかし、今年の9月27日に開催された第9回債権者集会における管財人の発言は、ビットコイン債権者のそのような期待を打ち砕く、あまりにも衝撃的な内容でした。

管財人は、「ビットコイン債権者のビットコイン返還請求権の評価は、破産開始決定時の価格で評価する」と発言したのです。

約3年前の破産開始決定時(2014年4月24日)のビットコインの価格はわずか483米ドル(約5万円)でした。これは、現在の価格の約20分の1です。この発言が意味するところは、例えば、Mt.Goxに対し1ビットコインを持っていた人は、483米ドル(約5万円)の破産債権しか持っていないことになるので、483米ドル(約5万円)を配当すれば100%配当したことになり、それ以上の配当はされないということなのです。つまり、債権者は、ビットコインの価格が1万米ドル(約100万円)になっても、1ビットコインあたり最大でも483米ドル(約5万円)の配当しか受けることができません。

そして、さらに衝撃的であったのは、管財人が、「破産債権に対して100%配当となった場合、残余の財産についてはMt.Goxの株主に分配することになると考えている。」と発言したことでした。

Mt.Goxの負債総額は、ビットコインを破産開始決定時の評価の483米ドル(約5万円)で計算すると、約4億6,000万米ドル(約460億円)となります。一方、Mt.Goxの資産を、ビットコインとビットコインキャッシュの現在の価格(価格変動があるので、ビットコインの価格を仮に1万米ドル、ビットコインキャッシュの価格を1,500米ドルとします)で計算すると、預金と合わせてMt.Goxの資産総額は約23億米ドル(約2,550億円)となります。したがって、その差額である約18億4,000万米ドル(約2,000億円)が、Mt.Goxの株主に分配されることになります。

では、Mt.Goxの株主は誰なのでしょうか。

Mt.Goxの株式の88%は、カルプレス氏が100%の株主である株式会社TIBANNEが保有しています。つまり、Mt.Goxの実質的な大株主はカルプレス氏であり、Mt.Goxの破たんについて経営責任を負うべきカルプレス氏が、16億1,900万米ドル(約1,800億円)の分配を受けることになるのです。

ビットコイン債権者の皆様は、このような結果を許容することができるのでしょうか?ビットコイン債権者の犠牲の下に、Mt.Goxの破たんについて経営責任を負うべきカルプレス氏に巨額の財産が分配されることは、不正義であると言わざるを得ません。

しかし、我々が日本の破産法を調査したところ、破産手続による限り、このような結果となってしまう可能性が高いことが分かりました。そこで、我々は、このような不当な結果を防ぐため、色々な方法を比較・検討した結果、民事再生手続に移行することが最善であるという結論に達しました。

では、なぜ民事再生手続なのでしょうか?

まず、破産手続から民事再生手続に移行した場合、1ビットコインあたり483米ドル(約5万円)という上限が適用されなくなります。この結果、民事再生手続に移行することによって、カルプレス氏らに多額の残余財産が分配されるという極めて不正義な事態を防ぐことが可能となります。

また、破産手続では現金での配当しか認められていませんが、民事再生手続では、ビットコイン債権者に対してビットコインで配当することを再生計画に定め、これを実行することも可能になります。

さらには、ビットコイン債権者に対して、分裂したビットコインキャッシュを分配することも可能となります。この方が配当の受け取りも簡単ですし、取引コストも小さくて済みます。

そもそも、ビットコイン債権者は、Mt.Goxに対してビットコイン返還請求権を持っていたのですから、「ビットコインに対してはビットコインとビットコインキャッシュで配当する」ことが取引の実体にあった解決であるといえます。

以上が、我々が、民事再生手続を申立てた理由です。

3.今後のスケジュール

前述のとおり、今後、調査委員による調査結果を踏まえて、東京地裁が民事再生手続を開始するか否かを判断することになりますので、現在は、Mt.Goxの破産手続が民事再生手続に移行するか否かの調査をしている段階です。

Mt.Goxの民事再生手続開始の申立ての進行状況については、本ウェブサイトで適宜開示して参ります。

4.債権者の方へのお願い

我々は、今後も引き続き、民事再生手続が開始されるように尽力していきます。

民事再生手続が開始されるようにするため、債権者の皆様にご協力をお願いすることもあるかと思いますが、その際には何卒よろしくお願い申し上げます。倒産手続は債権者のための手続きですので、多くの債権者の方が、民事再生手続への移行に賛同していることは、民事再生手続の開始が認められる有利な事情となります。お願いするご協力の具体的内容につきましては検討中です。

民事再生手続開始を申立てた我々に対して、ご質問やご要望を伝えたいという債権者の方もいらっしゃるかもしれません。しかし、本件については多数の債権者の方がいらっしゃることや、我々も限られた人的リソースで業務を遂行していることから、個別のお問い合わせには対応することはできません。また、我々は、依頼者ではない方に対して法的アドバイスをすることはできません。法的アドバイスについては、皆様の弁護士にお尋ねください。なお、本ウェブサイトは法的アドバイスを提供するものではないことをご了承ください。

我々は、債権者の皆様が関心を持つと思われる事項について、本ウェブサイトを通じて情報を発信していく予定です。

 

西村あさひ法律事務所

弁護士 福岡 真之介

同   菅野 百 合